破面の出現により、我が隊の阿散井副隊長、十三番隊のルキアさん、十一番隊の斑目第三席・綾瀬川第五席、それから十番隊の日番谷冬獅郎隊長・松本乱菊副隊長が現世へ向かわれた。
別に今までだって、阿散井副隊長と頻繁に会えたわけではないけれど。それでも、やっぱり、どこか寂しい。それに、親しくしていただいているルキアさんに、他の隊なのに少しお話させていただいた斑目第三席と綾瀬川第五席もいらっしゃらないし・・・。
あ〜ぁ、無理だとはわかっているけれど、私も行きたかったなぁ・・・。
なんて落ち込んでいても仕方がない。私だって、いつかは席官になって、阿散井副隊長と共に戦えるぐらい強くならなくちゃ!
そんなわけで、私は今日も隊舎で修行に励んでいた。・・・そんな所に。な、なんと!!朽木白哉隊長がいらっしゃった!!
「お、おはようございます!!」
「うむ、おはよう。・・・・・・済まぬが、少し用を頼まれてくれるか。」
わ、私がですかー?!!でも、周りには誰もいないし・・・。
「は、はい!!」
「技術開発局へ行き、現世組の様子を見てきてもらえぬか?」
「はい、かしこまりました!」
「頼むぞ。」
「はい!!」
た、隊長に直接御命令をいただけるなんて・・・。いや、命令自体は大したことじゃない。でも!!朽木隊長と直接お話する機会なんて・・・!!最近の私は、本当運が良い。
それに。現世組の様子なんて・・・。私も気になってるから、ちょうど良かった!朽木隊長も阿散井副隊長を心配なさって・・・だろうか?それとも、義妹のルキアさんを心配なさって・・・だろうか?それとも、単に現世の様子を気になさっているだけ?
何にせよ。私は、ちゃんと御報告しなければ!!そう意気込んで、技術開発局まで来た。・・・ここって、結構特殊な方々がいらっしゃるし、空気も独特だし、普通とは違う緊張感がある。だけど、今日はちゃんと朽木隊長の御命令があるのだから、と自分を鼓舞した。
「す、すみません。六番隊のと申します。」
「・・・あぁ、六番隊の。話は聞いてる。俺は阿近、よろしく。」
「はい、お願いいたします。」
「こっちだ。」
「はい。」
阿近さんに案内していただき、1つの部屋へ来た。そこには、私にはよくわからない物がたくさんあった。・・・こういうものって、できる限り触れないようにしないと。
「現世の様子だが・・・。これを見ればわかる。今は・・・この死神代行の奴の部屋で、事情説明してるとこだろう。・・・・・・まぁ、気の済むまで見てればいいから。何かわからないことでもあったら、俺を呼んでくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
来る前は、緊張してたけど。阿近さんって見た目と違って優しそうだし、安心した。それに、気の済むまで見ていていいのか・・・。そんなの、いつまででも見ていたいぐらいなんですけど。
本当、久々に皆さんの御姿を見ることができたと思うと嬉しくて、こちらに帰って来られるまで、見ていたいぐらいだ。だけど、そういうわけにもいかないし、ちゃんと切りのいいところで隊舎に戻らないと。朽木隊長にも御報告をしなければならないのだし。
・・・・・・・・・でも、もう少しぐらい、いいよね?そう思いながら、現世の様子を見ていると、少し後ろがざわついていた。・・・私以外にも、誰かが来たのかなーと思って、振り返ると。
「あー!」
「く、草鹿副隊長!!・・・それに、涅副隊長!!」
「こちらは・・・?」
「あのねー!この子は、びゃっくんの隊の子なんだよー。で、この人が好きみたーい。」
草鹿副隊長が阿散井副隊長を指しながら、十二番隊の涅ネム副隊長に説明をなさっていた。・・・それにしても、びゃっくんって、もしかして・・・。なんて、以前の疑問を考えそうになったけど、今はそれどころじゃない!!
「違いま・・・!!」
「へぇ〜、そうなのか。」
私が必死で否定しようとしたのは遮られ、草鹿副隊長と涅副隊長を案内なさっていた阿近さんにまで、そんなことを言われてしまった・・・。
「だから、この先は見ちゃダメだからねー!じゃ、ネムネム行こう!!これで、儲かるね!」
何の話をされているのかわからないまま、私は部屋から出されてしまった。そして、草鹿副隊長と涅隊長も、私と阿近さんを部屋から出すと、技術開発局を後にされた。
「よくわからねぇが、現世の様子は見るなってことらしい。・・・でも、まだ見足りないだろ?」
阿近さんが親切にも、そう仰ってくださって、私は素直に頷いてしまった。・・・いや、報告するには、もう充分だとは思うんだけど。
それでも、1度頷いてしまったのだから、と阿近さんについて、別の部屋へたどり着いた。・・・ここにも触れてはいけなさそうなものがたくさん!!むしろ、さっきより多いかもしれない。
「じゃ、今からここに映すぞ。」
そう仰りながら、阿近さんは何かを操作され、触れてはいけなさそうなものの1つに、阿散井副隊長の御姿が映された。
・・・でも、妙だ。ちっとも動きがなく、さっきまで見ていた阿散井副隊長とは違うような・・・。
「これって、現世の様子なんですか・・・??」
「いや、これはゲームの映像だ。」
「ゲーム、ですか?」
「あぁ。・・・って、こっちに説明させた方がいいか。・・・えぇっと、名前はだったよな?」
「はい・・・。」
一体、私の名前とゲームの映像がどうしたって言うんだろう・・・。まさか、さっき見足りなかった分、ゲームの映像で補え、ということなのだろうか。・・・でも、私は現世の様子を見に来たわけだから、それが見られないのなら、あまり意味が無い。それに、私の名前を聞く必要な無かっただろうに。
「あの、阿近さん。私は現世の様子が見たいので・・・。」
「。現世の様子を見に来たらしいが・・・。それは無理になっちまったみたいだな。」
阿近さんの代わりに、映像の阿散井副隊長が動き出し、そう仰った。
「その代わりと言っちゃ何だが・・・これで我慢してくれねぇか?確かに、これじゃお前の髪を撫でてやることも、お前を抱き締めてやることもできないが・・・。会話ぐらいなら、こうやってできるからな!」
御姿と御声は阿散井副隊長なのに、仰ってる御言葉があまりに違いすぎる。・・・・・・それなのに、照れそうになっている私は、阿近さんの思う壺だ。
・・・それにしても、やっぱり技術開発局は凄い所だ。どうすれば、映像がこんな風に会話っぽくできるんだろう?そんなこと考えても、私には一生わからないけれど、とりあえず、目の前の映像は映像であって、阿散井副隊長ではないということは、ちゃんと理解している・・・・・・つもりなのに。
「。現世の様子を見に来たのは、隊長の命令で?」
その映像の御声を聞くだけで、私は本当に阿散井副隊長にお会いしたときのように緊張し、体が強張ってしまう。
「それもあったかもしれねぇが、も俺のことを心配してくれてたんだろ?ありがとな。」
「あ、阿近さん・・・!!」
私の抗議に耳を貸すつもりはなさそうで、阿近さんは、また何かを操作なさっていた。
「俺はそんなが・・・。いや、のことを愛してる。」
「・・・!!!!も、もう充分です・・・!!お邪魔しました!!!」
ちゃんと礼はして、私は急いで立ち去った。それと入れ替わりに、誰かが部屋へ入っていかれた。
「阿近、あんまりからかってやるなよー。」
「そう言う鵯州こそ、気付いてて止めに入らなかっただろうが。」
「だって、アイツの反応が面白かったからさー!」
「確かに、な。」
阿近さんに依る【阿散井副隊長の映像に愛を囁いていただこう作戦】、成功。いや、この作戦名自体が疑問だけれど・・・。それに、阿近さんは、本当何をなさりたかったんだろうか・・・。不明な点が多いので、やっぱり、やや成功。
本当、朽木隊長には、私が見た現世の状況だけを簡潔にお伝えすることができて良かったけど・・・。この映像を見てから、私の心はもやもやすることが多くなってしまったように思う。
今日も、いつものように修行に励もうとしたけれど、集中力が続かなかった。最近の私は、ずっとこんな調子だった。これじゃ駄目だ、もっと強くなりたいのに、と思い直しても、ふと、この間の阿散井副隊長の映像の御言葉が頭に浮かんでしまうからだ。
『のことを愛してる』
そんな御言葉が頭で繰り返されては、私の体温は上昇し、修行に集中できなくなってしまう。
・・・もう余計なことは考えちゃ駄目だ!!
この間、私が技術開発局から帰った後、破面が出現したらしい。・・・これこそ、朽木隊長に御報告すべきだったように思うけど、それは見れなかったので、仕方がないとして。ともかく、尸魂界が破面との戦いに向けて、準備を始めている。私だって、少しぐらいは役に立ちたい。だから、今は自分の斬魄刀にだけ集中して・・・・・・
「あぶない!!!」
でも、そんな声が聞こえてきて、私の集中は途切れてしまった。一体何なんだと思いながら、後ろを振り返ろうとしたけど・・・・・・・・・すごい衝撃と共に、私の意識は無くなった。
気付けば、私は室内に居て、天井と人影が1つ視界に入ってきた。
「・・・・・・ここ・・・。」
「気がつきましたか?」
ここは何処なんだろうと言いかけていた私に、さっき見えた人影が声をかけてくださった。・・・って、虎鉄勇音副隊長!!ということは、ここは四番隊の隊舎か・・・。
「あ、あの・・・!うっ・・・!!!」
「あぁ!まだ動いちゃダメです。」
寝転がっている体勢では失礼だろうと思い、体を起こそうとしたら、予想以上に背中や肩の辺りが痛くて、虎鉄副隊長に支えられながら、また元の体勢に戻ってしまった。
「すみません・・・。それと、ありがとうございます。」
「いえいえ。」
「あの、私・・・どうして、こんなことに・・・?」
「貴方の後ろでは、鬼道の修行をしている人たちが居たんです。そして、力を思い切り込めた蒼火墜を放ち、それが貴方に当たってしまった・・・ということのようです。一応、治療はしましたが、ある程度は自然に治さないといけないので、あと2〜3日はここで休んでくださいね。」
「2〜3日、ですか?!」
たった2〜3日、私はそう思うことができなかった。・・・だって、破面たちは、こっちの準備を待ってくれるわけがない。私はまだまだ弱いから、少しでも修行をしたい。少しでも・・・。
「私、早く修行を始めたいんです・・・!!もっと早く帰れませんか?!」
「駄目ですよ、さん。」
虎鉄副隊長は困った顔をなさっているだけで、何も仰らなかった。・・・つまり、駄目だと仰ったのは、ちょうど部屋にいらっしゃった、卯ノ花烈隊長だった。
「勇音。下がっていいですよ。」
「あ、はい!では、失礼します。」
「あの、卯ノ花隊長・・・。私・・・。」
「駄目なものは駄目です。安静にしていれば、すぐに治るんですから。無茶はいけません。」
「ですが・・・。」
「何なら、2〜3日のところを、7日に延ばすこともできるんですよ?」
卯ノ花隊長は笑顔で、そう仰った。
・・・あ・・・れ・・・?これって・・・脅しじゃないですか?!四番隊の言うことを聞けないなら、怪我は治しませんよってことですよね?!!
なんとなく、卯ノ花隊長の周りの空気も黒く見えるのは、気のせいだろうか?・・・うん、気のせいだと思いたい。
「・・・わかりました。」
「さん。今回の事故は、避けようと思えば避けることができたはずです。修行中、何か考え事でもしていたんじゃないですか?この2〜3日は、その考え事に時間を充てられる、いい機会だと思いますよ。」
優しく、そう仰ってくださり、私もついに納得した。・・・でも、考え事って・・・・・・そう思って、またあの御言葉を思い出し、私は自分で顔が赤くなるのがわかった。・・・もう、本当恥ずかしい。
そんな私を見て、卯ノ花隊長が仰った。
「気になる人でも?」
「い、いえ・・・!そんなんじゃ・・・。」
「・・・阿散井副隊長のことですか?」
「えぇ?!卯ノ花隊長も御存知なんですか?!!」
「いえ、勘です。」
・・・なんだ。私が阿散井副隊長を意識しているということは、ルキアさん・草鹿副隊長・斑目第三席・綾瀬川第五席、そして、阿近さん・涅副隊長にまで知られてしまっている。だから、てっきり卯ノ花隊長も何かをお聞きになったのではないかと思ったけれど・・・だだの勘だったとは。・・・・・・恐ろしい。
「ただ、さんが六番隊だということと、今は六番隊の阿散井副隊長がいらっしゃらないということから、もしかしてと思っただけです。」
たしかに、私は今回の事故に遭う前、阿散井副隊長のことを考えていた。それで、修行に集中できなくて、周囲にも注意を払えていなくて・・・。でも・・・。
「気になる、ってわけじゃないです・・・。」
じゃあ、どうして阿散井副隊長のことを考えていたのか?・・・なんてことを自分に聞きたくなった。
「・・・さん。今回、このような事故に遭ったのは、体では修行を、頭では別のことを考えてしまっていたからですね?」
それはその通りだ。否定する部分は何も無く、私は静かにただ頷いた。
「私たちは別々のことを同時には、なかなかできないものです。・・・ですから、気持ちと言葉が違っているというのも、つらいものですよ。」
気持ちと言葉・・・。つまり、素直に感じたことを口に出した方がいいということか。
・・・そんなことは当然と言えば当然なのかもしれないけれど。この卯ノ花隊長の雰囲気の影響もあってか、私は妙に納得した。
「では、私はこれで失礼しますね。」
「あ、ありがとうございました!」
「いいえ。できるだけ早く治るよう、最善の処置をしますね。」
「はい、ありがとうございます!!」
卯ノ花隊長も部屋を出て行かれ、私は1人になった。そこで、私は、本当にじっくりと自分の気持ちについて考えてみた。そして・・・。
卯ノ花隊長に依る【想いに気付こう作戦】、見事成功。
そうだ、私は阿散井副隊長のことが好きなんだ。きっと、この気持ちは尊敬や憧れといったものだけじゃない。だから、この間のことも、あんなに気にしてしまったんだ。
・・・きっと、阿近さんのも【想いに気付こう作戦 準備編】だったんだ。そして、それが成功して、今日に繋がったんだ。
でも・・・。私は、自分の身分も弁えず、こんな想いを抱いてしまってもいいのだろうか?
← Back
Next →
最後だけ、ちょっと切なめですが。次回は、本来のテーマ通り、楽しく書こうと思っています♪ちなみに、次が最終話の予定です。・・・まぁ、番外編とかは書くかもしれないですけど(笑)。とりあえず、本編は次話で終わります。
そして、今回、主に出したかったキャラは、阿近さんと卯ノ花隊長です!このお2人だけでなく、全員がかなり捏造ですけど・・・(汗)。まぁ、それは今更ということで・・・!!
あと、楽しくするために、カラブリの話やコミックの小話的内容を入れてみました!わかりにくかったら、すみません・・・(苦笑)。
('08/05/16)